東京ストラディバリウスフェスティバル2018

FRIENDS Vol. 001マキシム・ヴェンゲーロフ Maxim Vengerov

ヴァイオリニスト/指揮者 Violinist/Conductor

私は10歳の時にストラディヴァリウスに触れました。幸運なことに、弾き方を、楽器から教わったのです。

ストラディヴァリウスは生きている楽器です。人間のように生きて、体内組織が活動し、弾き手はそれに語りかけなければなりません。楽器はそれぞれに人生や体があります。一つのストラディヴァリウスをある程度弾きこなせるようになったからといって、また別のストラディヴァリウスを弾きこなせる訳ではありません。演奏する日、状態、国による湿度の違いなど、条件は常に変わります。その時々に応じて弾かなければならず、それこそが美だと言えます。美は創造性の中にあります。

演奏者は、毎日、ヴァイオリンと触れ合うたびに新しい経験をしようという心構えがなくてはなりません。それは絵筆で絵を描くようなもの。常に何かが新しい。スケッチがあって、それがどう展開していくのかわかっていて、それが何を表現しているのかわかっていても、常に驚かされる。ヴァイオリンは人と共に生きる有機体なのです。

親愛なる友人の皆様。今年10月に東京で開かれるフェスティバルをとても楽しみにしています。ご来場の皆さんが素晴らしいヴァイオリンを目の前に、魔法のような時間を過ごされることを願います。

マキシム・ヴェンゲーロフ